その8 地味につらかった山道のロングドライブ
翌朝早々に事務所へ向かい、今回の仕入れリストを確認しサインを済ませた
しかしながら残念なことに、“無事に”とは行かなかった。日本とスリランカ間でずっと今回のやりとりをしていた担当者Sさん(ここでもまたSさんという偶然)がなぜか不在で、日本を発つ前に予約していた商品を受け取ることができなかったのだ。準備でき次第、日本の私の店まで届けていただくことにはなったが、なんとなく解せない思いで農園をあとにした。後日分かったことだが、Sさんは仕事のため急遽コロンボに向かわねばならず、代理のスタッフに引き継いだそうだが、なんとその代理の方も不在。要するにうまく引き継がれていなかったようだった
さて、コロンボからキャンディ、そしてウバでの行程を終えて、今日はコロンボに戻る。コロンボへの選択肢は、爆音で飛ばす高速バスか、半日以上かけて元来た道を鉄道で戻るか、高いけど一番早いハイヤーか。バスはなにかとストレスが多そうだし、往路で鉄道の旅情は存分に味わったので、迷わずハイヤーを選ぶ。ハイヤーは貸し切りなので一人だと割高ではあるが、その分、格段に効率よく移動できるので他を選ぶ手はない。ちなみに、だいたいは日本車のセダンであることが多い
ウバから延々とカーブが続く茶畑を抜けて、コロンボまでは約8時間のロングドライブである。行けども行けども茶畑とカーブと山道。もちろんガードレールのようなものはないので、運転手さんは慎重に慎重にいくつもの山を越えていく。途中、崖から転落した車があったりして、ますます運転手さんと私に緊張が走ったのだった
結局この山道が4、5時間続き、小学生ぶりに車酔いしてしまった私はランチをとる気分にもなれず道端で買ったバナナを命綱にほうほうの体でコロンボ入りした
スリランカ出張最後のホテルは、出発ギリギリに決めたハブロックタウンのプチホテル。このあたりはコロンボ屈指のお屋敷街であるシナモンガーデンの隣ということもあり、スノッブな雰囲気が漂うエリアである
。ちなみに、以前聞いた話によるとスリランカには相続税というものがないため裕福な家庭は代々裕福なんだとか。型落ちの中古車であってもべらぼうな値段で取引されているスリランカで、ピカピカのヨーロッパ
車が行き交う町である
さて今回のホテル。開け放した広いリビングスペースは、王朝時代のアンティークと南国的な大振りの植物で彩られ、モルタルの床はなんとも涼しげ。いわゆる“バワっぽい”ホテルだ
ここコロンボには、オーナーがスリランカが生んだトロピカル建築の雄、ジェフリー・バワに心酔していると思われる“バワっぽい”プチホテルが多く、1泊50ドル前後で宿泊することができる。本家のバワ建築のホテルは出張族には敷居が高いので、お手軽にバワ気分が味わえるこうしたホテルは非常に重宝する。ただし、網戸などというスタイリッシュとは対極のものはないので、蚊と格闘する覚悟があれば、だが
雨期とあって相当な蚊の大群が押し寄せるなか、私はベッドに吊るされた蚊帳の中で、非常食のお湯をかけただけで食べられるアルファ米と梅干でミニマムな夕食をとった
その9へ続く
#スリランカ買い付け出張記2023